フォルクスワーゲンの問題。悪化した燃費は賠償してもらえる?
フォルクスワーゲンが排気ガス規制に違反していた問題。
フォルクスワーゲンは、来年1月からリコールを開始する模様です。
独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のミュラー最高経営責任者(CEO)は国内紙のインタビューで、不正排ガス問題の影響を受けるディーゼル車のリコール(回収・無償修理)を2016年1月に開始し、同年末までに修理を完了させると述べた。(ロイター 10月7日(水)8時32分配信
違法なソフトウエアをアップデートすると規制をクリアすることはできるとのことですが、燃費性能は落ちてしまうそうです。
報道によればフォルクスワーゲンは、ソフトをアップデートするため1台あたり日本円で1万3500円〜2万7000円程度を見込んでいるといいます。
南ドイツ新聞は、VWの見積もりでは改修に必要な費用は一台当たり100~200ユーロ(約1万3500~2万7000円)と報じている。時事通信9月28日(月)18時45分配信
しかし、フォルクスワーゲンが販売時に告知していた燃費性能を下回ることになれば、消費者としては、購入当初の予定よりも、多額の燃料代を負担することになってしまいます。
消費者は、想定外の燃費費用を自己負担しなければならいのでしょうか。
想定よりも多額に負担することになった燃料代は請求できるか。
燃費性能は自動車を購入する際にとても大きな判断材料になるもので、軽微な誤りだったでは済まされない問題です。
ソフトをアップデートした際、どの程度の燃費が落ちるのかもわかりませんが、長年所有し続ける間に負担させられる燃料代は、場合によっては数十万円にもぼることも十分考えられます。
販売した商品に欠陥があり、その欠陥から損害が発生する場合については、損害賠償の請求をすることができます。今回のフォルクスワーゲンの問題ですが、販売当時、カタログなどで示していた性能を欠くということは、欠陥のある車と言えるでしょう。
車にかかる燃料費は、車の使用方法によっても大きく異なります。具体的賠償額を算定する際にはとても難しい問題がありますが、燃費性能が落ちてしまった分は基本的には賠償の対象となるものと考えられます。
アメリカではすでに集団訴訟が…。日本ではどうなる?
アメリカではすでに車のオーナーらが車の価値低下などで損害を被ったとして賠償を求める集団訴訟が提起されている模様です。
日本には、正規販売店でディーゼルエンジン仕様の自動車の販売がなかったこともあり、大規模な問題となることはないかもしれませんが、仮に今回のような問題が日本で起こった場合、ユーザーである消費者はどのような対応をすることができるでしょうか。
平成25年12月に消費者団体訴訟制度に関する法律が成立しています。
これは日本版クラスアクションとでもいうべき制度で、消費者が集団となって訴訟をすることができるのです。
消費者団体訴訟は、2段階の裁判になります。
まずは消費者団体が原告となって裁判を行い、事業者との間にある法律的な問題点があるかどうかを判断します(第一段階)。その後、その判断をもとに、消費者団体が、訴訟に参加を希望する消費者から依頼を受け、個々の消費者の損害額の判断してもらう裁判を行います(第二段階)。
この制度の導入により、被害者が個別に難しい裁判などを行う必要がなくなり、泣き寝入りをする被害を防ごうというわけです。
なお、導入の決まった消費者団体訴訟ですが、利用ができないケースもあります。
今回の燃料代は、先ほども述べたように、個別のユーザーの車の使い方によって大きく左右される問題です。個別の事案について複雑な賠償額の算定を求められるタイプの裁判では、今回導入が決まった日本版の集団訴訟にはなじまないとして、利用を見送られています。
消費者団体訴訟制度は、実際に施行されスタートするのはこれからで、詳細もこれからです。仮に今回の問題が日本で発生した場合、悪化した燃費性能の賠償を求めるについては、個別に賠償を求めていかざるを得ないかもしれません。
ただ、今後、消費者団体訴訟がスタートすると、企業の側からすれば、これまでであれば賠償などの問題になりにくかった少額の事案についても、賠償を求められることもあるということは念頭に置いておく必要があります。
フォルクスワーゲンの対応は単にソフトをアップデートする以上の対応が求められる。
今回のフォルクスワーゲンの問題は、単にソフトをアップデートしたら終息するというものではありません。
消費者の信頼回復…という視点からすると、今回取り上げた燃費の問題を含め、消費者の不満に丁寧に応えていく必要があります。
信頼回復の足がかりとなる対応策を早期に示せるか。注目です。