振り込め詐欺がなくならない理由

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振り込め詐欺による被害がとまらない。

先日もテレビ報道で振り込め詐欺の新たな手口として「東京来て来て詐欺」なるものが紹介されていた。

新手口“来て来て”詐欺のやりとり “実際の音声”
テレビ朝日系(ANN) 4月24日(金)16時10分配信


一昔前であれば、「母さん、オレだけど、交通事故を起こして賠償しなくちゃならなくなって…」などと電話をかけて、銀行ATMに誘導し、お金を振り込ませるといった手口だった。

ATMだと詐欺グループとしても足がつくので、近年は郵便を使ってお金を送付させる方法や、テレビ報道であったように東京に不慣れな地方に住む高齢者などをおびき出しお金を支払わせる手口など、様々なタイプの詐欺が繰り広げられている。

「投資詐欺」も舞台が異なるだけで振り込め詐欺の一種と言っていい。投資詐欺とは、将来的には上場して高騰するはずだ…と言って何の価値もない未公開株を買わせるといったやり口などをいう。

このような振り込め詐欺の被害は、警察白書によると平成25年には489億円にも達し、過去最高を記録している。

なぜ振り込め詐欺はなくならないのか?

これを考えるには、まず、消費者被害の特徴を見ておく必要がある。

「詐欺」は消費者被害なのか?

平成26年8月に国民生活センターから公表された「消費生活相談の概要」からトラブルの多い商品などを見てみると、1位は健康食品、2位はアダルト情報サイトとなっている。

健康食品に関するトラブルとして多いのは、高齢者宅に注文をした覚えのない商品を送り付けてきて代金を支払わせるといった手口だ。アダルト情報サイトのトラブルとしては、最初無料だと思ってサイトを進んでいくといつのまにか有料登録をしていて過大な代金を請求される…といったものである。

この手のトラブルに共通するのは「もともと犯罪行為であってお金をだまし取ることを目的に行われている」ということだ。振り込め詐欺はこの典型だ。

そのような意味で、契約内容の一部に不当な条項が盛り込まれていてトラブルになったり、商品の性能に問題があってトラブルとなったり…といった問題とは決定的に異なる。この場合、トラブルになるとは言っても、何も事業者がお金をだまし取ろうとしているわけではないのだ。

このように消費者被害とは事業者と消費者との間での情報力などの格差が原因で引き起こされるトラブルをいうのだが、振り込め詐欺をはじめとする詐欺被害とは、その本質が違うということを認識しておかなければならない。

 

「気を付けてください…」だけで被害はなくなるわけがない。

このような詐欺に対して、「詐欺にあわないように気をつけましょう」と呼びかけるだけで、はたして被害をなくすることができるだろうか。

以前、「高齢者の悪質商法被害を防ぐには?成年後見制度は機能するか?」という記事でも紹介したが、これから高齢化が加速度的に進むなかで、在宅で暮らす認知症の高齢者も増えていく。核家族化している家庭が増えているのだから、当然、認知症高齢者が在宅時に一人でいることも多くなっていくだろう。

認知症が進行していくと判断力が衰えていってしまう。このような方に対して、振り込め詐欺の最新の手口を紹介して、「さぁ気をつけましょう」と呼びかけるだけではとても被害を防ぐことはできない。

認知症高齢者を例にしたが、これは認知症高齢者に限らない。相手はいわば詐欺のプロなのだ。家族を思う人の気持ちに付け込んで、不安をあおり、通常の判断ができない状態に追い込んで騙しにかかるのだ。とても詐欺にあってお金をだまし取られた人を非難することはできない。

先ほど紹介した商品の安全性などのトラブルでいえば、例えば消費者がそのような問題のある商品を販売する会社の商品を買わないようになれば、そのような業者はいずれ市場から排除される…といった解決の仕方もあるだろう(いわゆる市場の原理)。

しかし、詐欺を働く業者にはこのような作用も期待できない。詐欺被害の解決を目指すには違うアプローチをしなければならない。

注意喚起をすることはとても大切なことだが、これだけでは振り込め詐欺を撲滅することはできないのだ。

 

振り込め詐欺をなくすのは行政の責任

振り込め詐欺被害を根本的に減らしていくには、行政が徹底した取り締まりをするしかないと私は考えている。「騙されそうな人」に目を向けることも大事だが、「騙す人」を何とかするべきだということになる。

現在、振り込め詐欺と認知された事件でも検挙率は3割ほどで、お世辞にも取締りが上手くいっているとは言えない。

手口として郵便を使う方法や直接金銭を受け取る方法が主流になってからは、全く対応できていないと言っていい。この現状を打開しなければ、振り込め詐欺は減少しない。

 

大切なのは現場力の充実を図ること

また、このような相談を日々受けている部署にも目を向ける必要がある。全国の消費生活センターなどで相談員をしている方々だ。振り込め詐欺をはじめ日々現れる詐欺の相談にあたっている。

相談を受ける現場で肌で感じる情報というものはとても大切なものだ。詐欺の手口も流行りだして社会問題化するまではデータとして出てこない。社会問題化してテレビ報道がなされる頃には多数の被害者が出ているのだ。相談の現場で得られる情報は将来的に流行る手口を先取りしていると言える。これが貴重であることはお分かり頂けることと思う。これを取締りにどのように生かしていくかを考えるべきだ。

このような極めて専門的で重要な業務にあたっている相談員であるが、実は大多数が非常勤職員という不安定な立場にあることをご存じだろうか。自治体によっては、私が住む福岡市のように相談業務を企業にアウトソーシングしているところさえある。

昨年、地域の相談員の待遇改善に向けて担当大臣が異例の声明を発表したのだが、実はそれほど相談員の方々の置かれている状況には問題がある。

振り込め詐欺をはじめとした詐欺タイプのトラブルを本気で撲滅したいのであれば、まずはこのような問題を取り扱う部門を行政の責任でしっかりと充実させなければ話にならない。

以前私が、司法書士の企画した法律相談会の実施の案内のために、ある自治体の担当者を訪ねたときのことだ。

いろいろな話をしたのだが、その方に言われて一番印象に残っているのは「相談業務など、民間でできるものは民間が主体となってやっていくべきであって、行政が本来やるべきことではない」という発言だった。

なるほど、行政の担当者らしい発想だなと思ったが、このような姿勢は間違っている。

消費者被害とひとくくりにしているものの中には、民間の努力ではどうにもならないタイプのトラブルもあるのだ。トラブルの本質に目を向けなければ、問題はいつまでたっても解決しない。

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