PCデポの解約トラブルは高齢者だけに起こる問題ではない(及川修平 司法書士)

公開日:  最終更新日:2016/11/15

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PCデポが業績予測を下方修正したとのニュースがあった。

ピーシーデポコーポレーション <7618> =2017年3月期の業績予想を下方修正し、売上高の見通しを540億円から455億円に、純利益を33億7000万円から19億9000万円に引き下げた。8月中旬に、高齢者を相手に高額なサポート契約を結んだとしてインターネット上で批判された影響で、パソコンなどの商品やサポートサービスの販売が減少すると見込む。〔決算〕PCデポ、通期業績予想を下方修正=高額サポート問題が影響 時事通信 2016/11/8

PCデポがインターネットで批判された件とは、高齢者がパソコンなどを購入したところ、長期に及ぶサポート契約をさせられ、解約を申し出たら10万円もの高額な解除料を支払わされたという件のことだ。

 

サポート契約の内容とはパソコンの使い方やウイルス対策をアドバイスするというものであったが、不慣れな高齢者に不必要な契約をさせ、カモにしているなどと大きな批判を浴びた。

 

PCデポではこのような批判を受け、契約者が75歳以上の高齢者の場合は無償で契約の解除に応じるなど、高齢者に配慮した対応策をとると発表している。

 

しかし、はたして今回のPCデポトラブルはパソコンに不慣れで知識の無い高齢者が契約の対象だったことに問題があったのだろうか。

 

実は、長期間拘束される契約ではトラブルが起こりやすい

PCデポのサポート契約では最長で3年間の契約となっていて、期間内に契約をやめようとすると解約料が発生する仕組みとなっている。サポートが不要になったからといって、無条件に契約をやめることができない。

 

このように一度契約をすると長期間拘束されてしまうタイプの契約は、実はトラブルになる例が多い。語学教室、資格試験予備校など、多くの人にとって身近なサービスでこれまでもトラブルになってきた。

 

語学教室の例では、過去には、NOVAがトラブルとなった。

 

NOVAは受講者に受講回数に応じたチケットを購入させいていたが、事前に多くのチケットを購入しておくとより安い単価で購入できる特典があるなど、長期間に及ぶ受講の契約を促していた。

 

しかし、いざ中途解約をしようとすると、購入時とは異なるチケットの単価を用いるなど変則的な清算ルールを導入し、NOVAが少額の返金で済むような契約としていて、問題となった(誤解のないように言っておくが現在のNOVAとは経営主体が異なる)。

 

資格試験予備校の契約は、受講期間が長いもので2年に及ぶ長期契約となる。契約の多くは、自己都合で受講中断の場合は、前払いした授業料を一切返還しないという契約になっている。

 

過去には、契約後、受講開始前に解約を申し出たにもかかわらず、一切返金しないとしてトラブルになったケースもあった。度々トラブルとなることから、業界大手のTACやLECといった事業者に対して、返金しないとする契約条項を是正するようにと、消費者団体から申し入れがなされる事態となったほどだ。

 

最近では、ライザップもニュースになっている。ライザップでは、サービス開始から30日の間に解約をした場合は全額返金すると広告しておきながら、実際には利用者の自己都合による解約のケースでは前払いした利用料を返金しないという契約となっていて、これが問題視された (なお、ライザップではその後、約款を見直ししている)。

このように長期間拘束される契約というのは、以前から度々トラブルとなってきた。

 

今回のPCデポのトラブルというのは、対象者がたまたま高齢者だったというだけだ。

 

 

なぜ長期間拘束される契約はトラブルになりやすいのか

このような契約の特徴としては、サービスを提供する側と受ける側の相性の問題もあって、効果が出るかどうかはっきりしない、サービスの効果に個人差があるという点にある。

 

PCデポの例で言えば、サポート契約を必要としている人は、そもそもパソコンに詳しくないわけなので、ある程度使ってみなければ、自分がパソコンで何ができるのか、どのようなサポートが必要なのかさえわからないはずだ。

 

実際にパソコンを使ってみてから「やっぱりサポートなんていらない」となったとしよう。普通は残りの契約期間についてはキャンセルをしたいと考える。ここで高額な違約金の設定で簡単に解約ができない契約になっているものだから、トラブルに発展してしまう。

 

NOVAや資格試験予備校、ライザップについても同じだ。実際に受講してみなければ、自分にあっているかどうかはわからない。講師との相性もあり、受講の効果があると感じるかどうかには、個人差があるものである。

 

受講生としては、仮に自分には合わない授業であった場合は、前払いした代金から、受けていない授業の代金は返金されて当然だと考える。にもかかわらず、実際には払い戻しには応じないとする契約になっていることで、やはりトラブルになりやすい。

 

このように、実際にサービスを受けてみなければ効果が発生するかどうかわからないにもかかわらず、契約期間が最初から長期に設定されている点に大きな問題があるのだ。

 

法律規制は一部に限定されている

では、法律の規制はどうなっているだろうか。

 

多くの人は知らないと思うが、法律上、中途解約をしたときに、受けていないサービス分を返金しないといけないのは、6業種のみとなっている(エステ、パソコン教室、語学教室、家庭教師、結婚紹介サービス)。

 

それ以外のサービスについては、基本的には契約のとおり清算されることになる。

 

契約の内容が一切返金しないとなっていたらそれまでということだ。

 

違約金が不当に高額である…という場合は、裁判などで争うことができることもあるが、不当性を自分で証明する必要があるなどハードルはかなり高い。

一般的な感覚としては、実際に何かを購入したりサービスを受けたりしたときに、それに対して対価を払うというものだ。例えば、飲食店などがそうだ。ラーメンを食べたらそれに対して代金を払う。とてもシンプルだ。

 

しかし、今回紹介したようなサービスの契約では、そのような感覚は通用しないということを十分認識しなければならない。

 

 

トラブルに巻き込まれないためには

ラーメン屋についていえば、お客さんとしては美味しいと思えばまた食べに行こうと思うだろうし、不味ければ行かなければよい。ラーメン店を経営する側からすれば、リピーターを増やすべく美味しいラーメンを出せるように営業努力をする。利益を確保するために2年分の代金を一括前払いさせるラーメン屋なんてない。

あらゆるサービスについて、このような感覚が契約に取り入れられればトラブルとはならないのだが、現状では特別な法律で守られているケースを除いては、そうはいかない。

 

契約期間が長期にわたるものは要注意だ。

 

セールストークの中では、契約を辞めるときはどうなるかという点について十分な説明がないまま、契約を急かされることもあるだろう。

 

まずは契約内容をしっかりチェックすることが大切だ。そして、ガイダンスや無料体験などを上手に利用したり、他業者との比較をしたりするなど、事前に情報の収集を図り、自分でリスクを減らす努力が必要となる。

 

 

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