不動産を買う その8 マンションから見える景色は保護される?

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今日は裁判例のご紹介。
大阪高等裁判所平成11年9月17日判決
  
マンションを建築完成前に購入したAさん。
パンフレットには「上階からは二条城の眺望が広がる」と記載されていた。
営業マンも
隣地のビルは購入を予定しているマンションの部屋よりも低い位置のあるので、
視界は通っていると説明した。
ところがマンションが完成してみると、隣地のビルは購入した物件の部屋よりも低い位置にあるものの、
隣地のビルの屋上に設置されているクーリングタワー(冷却塔)のせいで、二条城への視界が開けていないものであった。
 
これは当初の想定と違う。
Aさんは契約の解除を申し出た…
 
という事例です。
 
結論から言うと、今回のケースではAさんの主張が認められ、
契約の解除及び損害の賠償が認められました。
  
  
ポイントは次のとおり。
●マンションの購入にあたり、眺望は重視される一つの要素である。
●販売業者のパンフレットに二条城という特定の景観が強調されていたこと。
●Aさんがこのマンションを購入するに当たり、販売担当者に何度も景観に関する質問をしていたこと。
●販売業者も景観の良さという点がAさんがマンションを購入する動機となっていることを認識できたはずである。
  
 
  
ちょっと気を付けておかなければならないのは、
購入時に思い描いていた景観と実際が違っていたら、何でも契約を解除できる!
というわけにはいかないということですね。
   
今回ご紹介したのは、控訴した高等裁判所での裁判ですが、
元の地方裁判所での判断ではAさんが負けちゃってるんです。
  
地方裁判所は「市街地での眺望は、長期的・独占的に享受し得るものとは言い難く、隣地建物により眺望が阻害されることは、
特段の事情がない限り、受忍せざるを得ない…」と言ってますしね。
確かにこういう受忍せざるを得ないというケースもあるでしょう。

 
今回のケースでは、
ポイントとしてもご紹介しましたが、
Aさんが、交渉の経過のなかで景観に関する件を重要視して、何度も質問を繰り返していた…
という点から、
販売業者もAさんがマンションの購入に当たり眺望のよさを動機としていることを認識出来たにもかかわらず、
販売業者がちゃんとした説明をしていないからこその判断だったのではないかと思います。
   
  
   
何が動機になっているか、
交渉の中で何を言ったか
なんて、なかなか証拠になりにくいですよね。
  
不動産を購入しようとした動機・目的については、少なくとも書面で残しておく、
(例えば、仲介業者や相手方に書面を作成して交付しておく)
   
ということが大切なんじゃないかと思います。
 
不動産を購入しようとした目的については、
ホームページでも紹介している「瑕疵担保責任」においても重要な意味を持ってくることもありますし。
 
  
このお話はまた次の機会に。 
 
 
 

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