レオパレスの集団訴訟から考える、サブリース物件の注意点(及川修平司法書士)

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サブリース事業者大手のレオパレスが集団訴訟を起こされたと報じられた。
賃貸大手「レオパレス21」(東京)にアパートの修繕費を支払っているのに、契約通りに修繕が行われないのは不当だとして、アパート計約60棟を所有する全国のオーナー45人が20日、同社を相手取り、支払い済みの修繕費計約2億4000万円の返還などを求める訴訟を東京地裁に起こした。レオパレスオーナー45人、修繕費返還求め提訴 2017/9/21読売新聞


レオパレスは今年の2月にもオーナーから訴えられるという事態に見舞われているが、このときはレオパレスが契約当初保証していた家賃収入が減額させられたというものだった。

相続税対策や資産活用などのために賃貸アパート経営が加熱しているところだが、事業者とオーナーとの間のトラブルが顕在化してきている。

これはオーナーサイドの問題だから賃貸住宅に入居している人間には無関係…ということではいけない。入居者サイドとしては、このサブリース物件についてどのような点に注意をしておかなければならないだろうか。

サブリース契約とは?

サブリース契約とは、サブリース事業者がオーナーから賃貸物件を借り上げ、入居者に対して転貸する契約のことをいう。

入居者との間で契約する賃貸契約はあくまでサブリース事業者との契約であって、オーナーとは直接の契約関係に立つわけではない。賃貸借契約上のいわゆる「大家さん」はサブリース事業者となるわけだ。

オーナーとしては、相続税対策や資産活用などのために「投資」として賃貸アパート経営をするのだが、入居者との間で直接の契約関係に立つと、入居者の募集から、滞納家賃の督促や入居者間のトラブル、修繕などの様々な問題を自ら解決していかねばならない。

これがサブリース契約を結んでおけば「大家」としての義務の一切はサブリース事業者が引き受けてくれることになるので、そのメリットは大きい。そのような意味で通常のアパート経営などと比べてより投機的な意味合いが強くなってくるといっていいだろう。

ところで、一方の入居者サイドからしてもサブリース事業者が大家さんとなることで、大手のサブリース事業者であれば、その分、安心感もある…と思うかもしれない。

しかし、サブリース契約の構造をよく理解しておく必要がある。

サブリース契約の背後には「オーナー」の存在がある

賃貸アパートの契約では、一番トラブルとなりやすいのは退去時の物件内の修繕に関するトラブルだ。

例えばクロス。クロスなどは、生活をしていれば、気をつけていても古くなるし汚れてくる。このようなものは通常入居者負担でリフォームをする必要はないのだが、このようなクロスの張替え費用などのリフォーム費用の負担をめぐるトラブルというのは未だに多い。

サブリース契約の場合、リフォーム費用の負担を誰がするかという点については、契約の当事者である入居者とサブリース事業者で決するはずなのだが、話はそう単純ではない。

契約の当事者は入居者とサブリース事業者なのだが、物件の所有者はあくまでオーナーだからだ。

その物件の修繕は所有者であるオーナー負担で行うことが多く、最終的な決定権限はオーナーが握っていることが多いのだ。

「オーナーの許可がおりません」はよくある話

日頃の業務の中で賃貸アパートの退去時の清算に関する依頼を受けてサブリース事業者と交渉をすることがあるが、最終的な決定権を持っていないサブリース事業者がほとんどだ。

交渉などであの手この手で提案をしても「オーナーの許可がおりません」という回答で話が進まないこともしばしばある。

これはオーナーとサブリース事業者との契約内容にもよるのだが、リフォーム費用についてはオーナー負担となっていることが多いことが原因であると考えられる。

こうなると、相手が大手のサブリース事業者であるとしても、真の交渉相手は個別のオーナーとなるわけだ。

オーナーとしては、日頃、サブリース事業者にまかせているので、自らリフォーム等の手配をするということはまずないだろう。リフォーム費用をめぐるトラブルは相変わらず件数が多いと先ほど書いたが、この手のトラブルについても理解の程度は様々だ。各オーナーで判断が大きくぶれることになるので注意が必要だ。

相手が大手のサブリース事業者であるとしても、退去時の清算でトラブルになってしまう可能性がなくなるわけではない。部屋の様子がわかるように写真を残すなど、トラブルに備えて準備は怠らないようにしなければならない。

入居者にしわ寄せがくることがないように願いたい

冒頭で触れたレオパレスの訴訟の件は、オーナーに対して契約当初保証していた家賃収入や修繕などがなされていなかったしてトラブルになったものだ。

オーナーとレオパレスとの間でどのような合意がなされていたかについては、今後、裁判の中で明らかとなるだろうが、合意の有無はともかく、レオパレスが当初の契約内容を維持できなくなっていることは事実だ。これは賃貸アパート経営の難しさを示しているものといえる。

サブリース契約は各事業者によって様々だ。具体的にトラブルとなった際は、各関係をよく確認しなければならない。

オーナーとサブリース事業者との収益を確保するために、入居者が本来請求すべきでないような修繕費用の請求がなされるなど、入居者サイドにしわ寄せがくることのないように願いたい。

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