冗談を言う権利
いつだったか、東区にある「箱崎水族館」という喫茶店に入ったときのこと。
なんでそんな妙な名前の喫茶店に入ったんだか、今となっては全然思い出せないんですが、とくかくその日、僕は「箱崎水族館」に入った。
ドアを開けて中に入ろうとしたとき、店員さんに声をかけられた。
「いらっしゃいませ。せっかくお越しいただきましたが、あと一時間ほどで閉店となりますけどよろしいですか。」
そのときお昼の2時頃だったのに閉店とはどうしてだろうと不思議な感じがしたが、まぁ長居をするつもりもなかったので、喉が渇いていた僕は、それでもかまわない、とお店の中に入った。
怪訝そうな顔をしていた僕に店員さんが話しかけてきた。
「今日はお店を閉めたあと、九大の先生を招いて、ウナギの生態についてのお話を聴くんです」
なんでも箱崎水族館は単なる喫茶店ではなく、貸しギャラリーになったり、コンサートをやったり、いろんなイベントをやっているんだそうだ。
今日がたまたま「ウナギの生態のお話」の日だったのだ。
そんなに人が集まるのかよ…と思ったんですが、意外と盛況だそうで、多くの参加を見込んでいるとのことだった。
意外なところに意外なニーズがあるものだ。
「じゃ最後は参加者みんなにウナギの蒲焼が出てくるんですか?」
と僕は店員さんに訊いてみた。
「えっウナギを召し上がりたいのなら、数軒先がちょうどウナギ屋さんで…」
と真顔で答えられた。
僕にだって冗談を言う権利くらいはある。
ただ誰も僕の冗談を冗談として理解してくれないだけなのだ。