女のいない男たち

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先日、大阪に出張に行ったときのこと。
飛行機を待っている間、何か暇つぶしになるものはないかな…と思って本屋に行ったら、
『女のいない男たち』(村上春樹さん著)が店頭に山盛りになっていたので、買ってみました。
 
奥さんと死別したり、
奥さんが浮気をして出て行ってしまったり…、
いろんな「女のいない男」の状況についての短編小説です。

えーと、
これから書くことは僕なりの理解でしかないです。
正しいとか間違ってるとか言われても困りますので(僕は評論家とかじゃない)、前もって言っときます。
 
 
さて。
 
村上春樹さんの小説は、高校生くらいのときから読んでいますから、もう20年近くになりますか。
僕の周りには、アンチ村上春樹派が多い(というか好きだという人が一人もいない)ので、肩身が狭いんですけど、
僕的にはすごく好きで、新刊がでると読んでいます。
 
作品は、年々変化していきますね。
  
1982年の作品『羊をめぐる冒険』では、
「羊男」なんていう羊の毛皮を被った、なんだかよく分からないものが出てくる。
  
主人公は、この「羊男」に目が向いていて
(羊男というのは、言うなれば自分の中の奥深いところにいて、自分でもよく分からないものとでもいうんでしょうか)、
「人と繋がる」ということになかなか目が向いていないんですね。
 
この『羊をめぐる冒険』に出てくる主人公も離婚を経験して一人になるんですけど、
「羊男」的な世界に目が向いているせいか、
離婚という大変な事態になってしまっても、どこかそんなに悲しんでいる様子もない…といった具合なんです。
 
  
では今回の
『女のいない男たち』
ではどのように変化をしていくか。
   
この短編小説では、
様々な状況で女性との別れを経験した男性の目を通して、
 
 
異性というものと「繋がる」ということはどういうことか、
 
そしてその不可解さ(永遠に理解なんてできないんじゃないか)

 

というものが描かれているんじゃないかと思います。

 


いくつか紹介してみます。
 
『木野』。
それまで勤めていたスポーツ用品の会社を退職し、バーを始めた木野。
バーを始めたのは、
木野の奥さんが自分の勤めていた会社の同僚と浮気をしていたことが明らかとなったのを機に、離婚し、会社を辞めたからなんですが、

そのバーを訪ねてきた(元)奥さんとの会話が興味深いんです。

浮気をした奥さんから謝罪をされるんですが、
木野の対応は悲しみなどというものは表現されず、どこか他人事のようなんです。

でもこれは先ほどの『羊をめぐる冒険』のように羊男的なものに目が向いている…とかいうことではないんですね。

最初は、奥さんが浮気をして出て行ったという状況が、自分でもうまく飲み込めていない。
深い深いところで悲しんでいるんですけど、それが深すぎて自分でもうまく理解できていないんですね。

木野の悲しみは、大きく後からやってくる。
木野はそのときになって初めて自分が悲しんでいたんだということに気付く、という物語です。


もう一つ『独立器官』。
美容外科医として経済的にも女性関係にも何ひとつ不自由していない、ある医師の話。
それまで何不自由なく生活をしてきたその医師は、
あるとき、深く深くある女性を好きになってしまったことを機に、
それまでの何でもそつなくやれていた人生をひっくり返すかのように、大きく変化していく。

自分の人生の意味とは何だろう…という
自分でさえ認識していなかった心の動きを呼び起こしたもの、
その引き金になったのが、
ある女性であったという点がとても興味深いですね。 
 
うまく言えないんですが、
その女性が、
そのときに、
その医師の心にどうしようもなく作用した…とでもいうのか。


※女性関係に何一つ不自由しない、うまく立ち回れるその医師ですが、
その医師がどうしようもなく好きになったその女性は、
その医師のことをそれほど本気で好きだったわけではない、という点も面白いですね。
他人は他人の人生を生きているんですね。なかなか自分の思うようにはならない。
 
 
 
他人と本気で繋がるということは、なかなかしんどいところもありますね。
ときに命をかけるくらいに。
 
 
だからこそ、面白いのだということなんでしょうか。
 

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